1章の図1.1では, 地震の震源が何か爆発のようなイメージで漫画的に表現されていましたが, 実際にはどんなことが起こっているのでしょうか? 地震が生じた際に得られる各地での地震動記録や,震源地付近での土地変形の様子, および理論的考察などを総合することによって,現在私たちは地震現象の本質について, 以下のような結論に到達していています. それは,『地震とは,地下の岩盤に力が加わり,それが岩石の破壊強度を上回った際に生じる破断現象である』 というものです.
ひとたび地中のある1点でこのような破断が生じると,周辺の領域も最初の破壊点とほぼ同じ状況にあるため,
同様の現象がドミノ倒しのように周囲へと伝播していきます
(図2.2).
たとえが適切かどうかわかりませんが,女性のストッキングの「伝線」現象のようなものです.
この結果,ある広がりをもった岩盤の食い違い面,すなわち断層面が形成され,やがて破壊は停止します.
このような一連の現象が「断層運動」です.
=== 図2.2 地震の発生と断層面の形成 ===
図2.2において,破壊の開始点を「震源」,
その真上にあたる地表の点(×印)を「震央」と呼びます.
また,地下に生じた断層面は「震源域」とも呼ばれます.
このように,地震を起こす源は有限の広がりを持っており,地震の位置を点で表わすことは,
とくに大きな地震の場合不適当です.
地震の巨大なエネルギーは点から生まれるわけではなく,当然ある広がりをもった領域が関与しています.
断層面上を破壊が伝播していく速度は秒速2.5〜3km/sですが,これは時速に換算すると約10,000km/hになります.
10,000kmというのは地球の1/4周,すなわち北極から赤道までの距離に相当しますから,
地中を破壊が走っていくスピードは,どんなジェット機よりもはるかに速いということができます.
図2.2に示したように,
破壊を完了して出来上がった全体の断層面は,第一近似的には下敷きのように単純な平面形状をしています.
また,通常,断層面は地下部分で閉じており,地表にまでは到達しません.
人間の体でたとえれば,体内の傷による内出血のような状況でしょうか.
しかし,大事故の場合に骨が皮膚を破る例があるように,ごくまれな浅い大地震の場合には,
断層面が地表をつき破り,地面に食い違いを出現させることがあります.
この場合,地表に現れる断層の痕跡は,ほぼ直線状であることが観察されています.
=== 図2.3 兵庫県南部地震により食い違いを見せた野島断層(北淡町提供:科学技術庁パンフ「活断層」より)===
最近では,1995年兵庫県南部地震(M7.2)の際に,
淡路島西岸に沿って1.5〜2mの地表食い違いを出現させた野島断層が有名になりました
(図2.3).
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