1.3 震度で見た地震回数とMで見た地震回数
地震の回数を震度で見る場合とマグニチュードで見る場合とでは,大きな違いがあります。
図1.7は,1926年から2008年までの83年間に日本周辺で発生したM6以上の地震の積算回数と,
最大震度6以上(1996年10月以降は震度6弱以上)を記録した地震の積算回数を比較したものです。
M6以上の地震はほぼ一定の割合で増えていて,地震の発生状況に大きな変化は見られないのに対し,
最大震度6以上を記録した地震の数は1995年頃から急激に増大しています。
この原因は,1.1節で述べたとおり,震度の決定が計測震度計による方式に変更され,
全国の震度観測点の数が200足らずから数千点へと爆発的に増大したため,
それまで見逃されていた大きな震度が拾われるようになったためと考えられます。
すなわち,1995年以降の積算回数の方が真実であり,
それ以前は大幅な取りこぼしがあったものと考えられます。
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図1.7 1926〜2008年の83年間に日本周辺で発生したM6以上の地震と震度6以上の地震の積算回数
(気象庁データによる)
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実例として,図1.8に,2004年新潟県中越地震における震度分布を示します。
この地震では,1995年兵庫県南部地震以降初めて震度7が川口町で記録されたほか,
震度6強が3個所,震度6弱が12個所で観測されました。
ただ,これらの震度観測点はいずれも1995年以降に新設されたものであり,
ひと昔前であれば,震度観測は最寄りの高田と新潟の気象官署でしか行われていませんでした。
したがって,もし新潟県中越地震が10年前に発生していたら,
この地震の公式最大震度は5または4にとどまっていたはずです。
この一例でわかるとおり,震度で見た地震回数の急増を見て「最近は地震が多くなった」
と言うことは誤りであり,震度観測体制の急変がその原因であることは明らかです。
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図1.8 2004年新潟県中越地震の震度分布と震度観測点
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一方,地震回数の地域的分布については,震度で見てもマグニチュードで見ても,
それほど大きな違いはないものと考えられます。
図1.9は,全国の主要な観測点において1970〜2000年の30年間で平均した有感地震回数
(震度1以上)の分布を示しています。
東日本の太平洋側では年間に数10回という有感地震があるのに対し,
関西地方では地震を感じる回数が非常に少ないことがわかります。
ただ例外として,和歌山市付近には地震の巣があって常時の地震活動が高いため,
有感地震の回数が特異的に多くなっています。
九州の雲仙ではこの期間に普賢岳の噴火があり,また,
南西諸島の奄美大島では周辺海域で活発な群発的活動があったため,
いずれも大量の有感地震が発生した影響が現われています。
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図1.9 全国の主要な観測点における年間有感地震回数の分布(気象庁データによる)
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