4.2 地震の発生様式と火山

=== 図4.12 東北日本の東西断面に投影した震源分布(東北大学データによる) ===
東北日本の東西断面に投影した震源分布
 図4.12は, 東北日本を東西に横断する断面で深さ250kmまでの地震の発生状況を見たものです. この図では,右上の日本海溝付近から左下の日本海直下にかけて, 段々深くなりながら震源が2本の列をなして並んでいるのが印象的です. これは深発地震の二重面と呼ばれ,太平洋プレートの沈み込みに伴って発生している地震群ですが, この延長は,ウラジオストック下の深さ600〜700kmまで追跡することができます.
 一方,これとは別に,図4.12では 東北日本直下の地殻浅部にも多くの地震が集中的に発生しています. これらの地震の震源の深さは,おおむね15〜20kmより浅いものです.



=== 図4.13 海溝型地震と内陸型地震 ===
海溝型地震と内陸型地震
 上の東北日本の断面図に典型的に見られるように,日本周辺で発生する地震は, 図4.13の模式図に示すとおり, プレートの沈み込みに伴ってプレート境界付近で発生する地震群と, 陸域の浅部に発生する地震群とに大別することができます.
 前者のうち,陸側にゆるく傾く海溝部付近のプレート境界を断層面として発生する低角逆断層型の地震を 「海溝型地震」と呼びます(図4.13の赤い断層面). ここでは,時としてM8級に達する「海溝型巨大地震」が,100〜200年の再来間隔をもって生起しています.

 一方,後者は「内陸型地震」と呼ばれ,プレートの運動によって生じる圧縮力によって間接的に蓄積された 歪エネルギーを解放するために,陸域浅部で断層運動を生じるものです (図4.13の緑の断層面). この型の地震の大きさは通常M7級どまりであり, 垂直に近い断層面をもった横ずれ断層型や高角逆断層型である場合が普通です. 歪の蓄積するスピードはプレート境界と比較して1桁から2桁遅いため, 特定の断層における地震の繰り返し周期は数千〜数万年といわれています.



=== 図4.14 日本周辺の活動的火山の分布(気象庁HP「我が国の活火山の分布」より) ===
日本周辺の活動的火山の分布
 ところで,地震と兄弟分にあたる火山は, 我が国の周辺で図4.14のような分布を示しています. この分布は我が国を取り巻く海溝の配置に平行しており, 図4.10のプレート等深線に照らし合わせてみると, 太平洋プレートが100〜150kmの深さに達した位置に相当しています. これは,沈み込むプレートとともに地中へ持ち込まれた物質や海水が, このあたりの深さでマグマに転じる物理・化学条件に達するためと考えられています.

 日本付近に限らず,太平洋を取り巻く火山群など,プレート境界付近に存在する火山は, 概ね海溝から300〜400km島弧側の位置で海溝に平行するような配列を見せています (ただし,ハワイやアフリカなど,例外的にプレート中心部に存在する火山は, 地球のより深部からマグマが上昇してくる「ホットスポット」に起源を持つものと考えられています).



=== 図4.15 日本列島の代表的構造断面(竹内均「地球の科学」NHKブックスより)===
日本列島の代表的構造断面
 以上を総合して,図4.15では, 地震および火山を含めた形で,日本列島の代表的な構造断面が示されています.

 これまで述べてきたように,地震活動や火山活動を起こす力の源はプレートの運動であり, その根源は地球内部の熱エネルギーです. したがって,地球が冷え固まってしまわない限り,すなわち地球が生きている限り, 地震も火山もなくなることはないわけです.
 ひとつの地球上で色々な動物や植物と共存していくのが「環境問題」であるのなら, 地震や火山も,生きている地球上で我々人類と共存する「環境問題」の仲間であるということができます.




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